症例紹介

腰椎分離症

1. 腰椎分離症とは?

腰椎分離症(以下分離症)とはスポーツなどで、反ったり捻ったりする動作(図1)を繰り返し行う事で腰椎に生じる疲労骨折です。野球、サッカー、バスケットボール、陸上などの競技に多くみられ、そのほとんどは第5腰椎に生じます。10歳代に生じることが多く、女性よりも男性に多いと言われています。

 

 

図1


2. 進行の程度

分離症は、進行の程度によって初期・進行期・終末期に分けられます。

 

初 期:不全骨折(骨にヒビが入った状態)

骨癒合(骨折した骨がくっつく反応)期間は2〜3ヶ月

骨癒合率は80〜90%

進行機:完全骨折(骨に完全に亀裂が入った状態)

骨癒合期間は3〜6ヶ月

骨癒合率は50〜60%

終末期:偽関節(骨癒合の反応が終了した状態)

骨癒合率は0%

 

腰椎分離症は症状や経過により、スポーツ復帰までは3〜6ヶ月ほどかかると言われていますが、早く発見されればされるほど治りがいいケガです。

 

3. 検査方法

接骨院へ受診された際には問診・視診・触診・徒手検査等を詳しく行います。徒手検査ではワンレッグエクステンションテストを行います。

※ワンレッグエクステンションテストとは、患者さんに片足立ちになって頂き、上体を、片足立ちをしている側へ向かって斜め後ろに倒した時に痛みが誘発されるか確認するテストで、陽性時は腰椎分離症が疑われます(図2)。

 

図2


分離症が疑われる場合は、提携先の整形外科へご紹介させて頂き、レントゲン検査やMRI検査、CT検査を行って頂きます。

特にMRI検査、CT検査が病態の把握に有用で、それらを実施することで分離症が発症してすぐかどうか、またどのぐらい進行しているのかなど、より詳細にケガの状態を把握することが出来ます(図3A、B)。

 

図3A

 

図3B


4. 治療方法

腰椎への負担を減らすために体幹キャストコルセット(図4)を作成し、終日装着して頂きます。

当院で処方している各種コルセットの中では最も固定力が高く、当日その場で体に合わせてオーダーメイドで作成します。骨折が生じた腰椎を完全不動化することで痛みと炎症を早く鎮め、骨癒合を促進し偽関節となることを防ぎます。両側性の分離症の場合、将来的に腰椎すべり症を発症するリスクが極めて高いため、当院では体幹キャストコルセットの装着を強くおすすめしております。 

図4


※一般的な軟性コルセットでは骨癒合に至らず偽関節化してしまうことが多いので注意が必要。

 

当院では電療や手技療法の他に、骨折部位の骨の形成を促進し、骨癒合期間を約40%短縮する低出力超音波パルス療法(LIPUS)を実施しております。また、骨癒合をさらに促進させる為に適切な栄養指導も実施します。

 

身体の柔軟性低下が根本原因のため、再発予防も兼ねてストレッチ指導を行います。また、筋力低下を予防する目的でトレーニングを実施し、自宅でできるリハビリも指導します。リハビリを継続して行うことで再発を予防し、競技復帰後はケガの前よりもパフォーマンスが向上している状態を目指します。

 

 

5.症例紹介

14歳、男性、腰椎分離症

⑴負傷原因

学校で部活のバスケットボールでディフェンスの練習中、とっさに体を切り返した際に腰部に激痛が走り負傷。

⑵経緯

安静にし様子をみるも、痛みが改善しないため3日後に当院来院。

問診・視診・触診・徒手検査の結果、腰椎分離症の可能性が高いと判断したため、腰部の体幹キャストコルセット固定法を実施し提携先の整形外科に紹介し、第4腰椎分離症と診断され、以降当院にてリハビリを行う。

⑶治療内容

整形外科へ紹介後は医師の同意のもと、来院時に電気療法、手技療法、運動療法、LIPUS等行い、日常生活では固定療法を継続。

⑷経過

治療を継続し、負傷から約5か月半後には骨折部が完全に癒合したため治療を終了しました。

⑸総評

腰椎分離症は早期に発見することで、偽関節にすることなく骨癒合させることができるケガです。また当院で作成する体幹キャストコルセットを装着し、骨折が生じた腰椎を完全不動化することで痛みと炎症を早く鎮め、骨癒合を促進し偽関節となることを防ぎます。さらに適切なリハビリを行うことで体の柔軟性と筋力を高め、競技復帰後に再発することがない身体を作ることができます。